モデルケース2026年11月7日

問い合わせ・クレームへの返信を、AIで下書きする事実と約束は人が決めて、返信を1通30分から10分に

管理会社の担当者が入居者からの問い合わせを受け、AIと一緒に丁寧な返信メールを作っている様子のイラスト

「上の階の音がうるさい」「共用部の電気が切れたまま」「修理の日程はまだか」。管理会社には、毎日さまざまな問い合わせや苦情が届きます。返信の文面に悩み、言葉を選んで書き直しているうちに、1通に30分以上かかることもあります。この記事では、問い合わせやクレームへの返信を、AIで下書きする方法を、賃貸住宅の管理会社のモデルケースで紹介します。大事なのは、AIに「謝り方」を任せきりにしないことです。

会社
J管理/地方都市の賃貸住宅の管理会社(アパート・マンション約800戸)
規模
従業員15名、問い合わせ対応は3名
困りごと
メールやフォームの問い合わせが月200件ほど。苦情への返信に時間がかかり、担当者によって文面の質に差がある
対象の業務
入居者・オーナーからの問い合わせ、苦情への返信メールの作成

困っていたこと

  • 苦情の返信に1通30分
  • 担当者で文面に差
  • 返信が遅れて苦情が大きくなる

やったこと

  • 返信の型と前提メモを用意
  • 名前を伏せてAIで下書き
  • 事実と約束は人が確認

変わったこと

  • 1通10分ほどに
  • 文面の質がそろった
  • 返信が早くなった

返信に時間がかかる理由

J管理の担当者に聞くと、時間がかかっているのは事実の確認ではなく、「どう書けば角が立たないか」を考えるところでした。お詫びの言葉が足りないと相手の気持ちを逆なでし、多すぎると会社の落ち度を認めたように読める。何度も書き直すうちに、返信が翌日に回ってしまいます。

AIは、落ち着いた丁寧な文章を作るのが得意です。事実と対応方針を人が決め、文章に整える作業をAIに任せることで、早く、そろった返信ができるようになります。

入居者からの問い合わせを受けて、事実を確認し、AIで返信の下書きを作り、担当者が確かめて送るまでの流れの図解
事実と方針は人が決め、文章はAIで下書きする

AIで返信を下書きする流れ

  1. 問い合わせを受ける内容を読む
  2. 事実を確かめる記録と現場
  3. 方針を決める何をするか
  4. AIで下書き名前は伏せて
  5. 人が確認して送る約束の中身
入居者からの苦情メールを前に、返信の文面に悩んで書き直している管理会社の担当者のイラスト
これまで言葉選びに悩んで、1通に30分以上かかっていた。
AIが作った返信の下書きを確かめながら、落ち着いて送信しようとしている管理会社の担当者のイラスト
AI導入後方針を決めて下書きを作らせ、確かめて送るだけ。

1〜2. 事実を確かめる:問い合わせの内容を読み、これまでのやりとりや修理の記録、必要なら現場を確かめます。ここはAIにはできません。

3. 方針を決める:「いつ、何をするか」「何ができないか」を人が決めます。

4. AIで下書き:問い合わせの内容と方針をAIに渡します。入居者の名前、部屋番号、電話番号などは伏せて渡し、下書きができてから人が入れます。

5. 確認して送る:事実や約束の中身が正しいかを確かめて送ります。

AIへの頼み方と、出力の例

頼み方の例 当社は賃貸住宅の管理会社です。入居者からの次の問い合わせに対する返信メールを作ってください。 【問い合わせ(要約、名前は伏せています)】 共用廊下の照明が3日前から切れていて、夜は暗くて怖い。前にも電話したのに直っていない。 【事実と方針】 ・2日前に電話を受けたが、業者への手配が遅れていた(当社の連絡の不手際) ・明日10時〜12時に業者が交換に行く ・それまでの間、今日中に仮設の照明を置く 【条件】 ・不安な思いをさせたことと、手配が遅れたことをお詫びする ・対応の日時をはっきり書く ・言い訳はしない。200字程度
AIの出力(例) 〇〇様 いつもお世話になっております。〇〇管理の〇〇です。 このたびは、共用廊下の照明が切れたままとなり、夜間にご不安な思いをおかけして申し訳ございません。また、先日お電話をいただいたにもかかわらず、当社の手配が遅れましたことを、重ねてお詫び申し上げます。 本日中に、廊下に仮設の照明を設置いたします。 照明の交換は、明日〇月〇日(〇)10時〜12時に、業者がうかがって行います。 作業が終わりましたら、あらためてご連絡いたします。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

出力の「〇〇」の部分は、AIに渡していない情報です。名前や日付は、下書きができてから人が入れるようにすると、個人情報をAIに入れずに済みます。

苦情の種類ごとの、返信の型

よくある問い合わせは、種類ごとに返信の型と方針を決めておくと、さらに早くなります。J管理では、次のような一覧を作り、AIへの頼み方に添えています。

問い合わせの種類返信で必ず書くこと注意すること
設備の故障(照明・給湯など)受付のお礼、対応の日時、それまでの代わりの手段日時が決まっていないときは「いつまでに連絡するか」を書く
騒音・生活マナー受け止めたこと、全戸への注意喚起など当社がすること相手の部屋を特定する書き方をしない
修理の進み具合いまの状況、次の予定分からないことは「確認して〇日までに連絡」と書く
費用の負担契約書や規約の該当箇所、当社の判断負担の判断は人が決める。AIに判断させない
ここがポイント

騒音の苦情などでは、相手の部屋や入居者を特定できる書き方をしないことが大切です。返信の型に「特定しない」を入れておくと、AIの下書きにも反映されます。

「謝り方」と「約束」は人が決める

AIに「丁寧に謝って」と頼むと、必要以上にお詫びを重ねたり、まだ分かっていない原因を当社の責任のように書いたりすることがあります。逆に、事務的すぎる文面になることもあります。

J管理では、苦情への返信1通にかかる時間が、約30分から約10分ほどになりました。返信が早くなったことで、苦情がこじれる前に収まることが増えています。

注意点と、やってはいけないこと

失敗例入居者の名前・部屋番号・電話番号をそのままAIに入れる

避け方名前や部屋番号は伏せて渡し、下書きができてから人が入れる

失敗例AIの下書きを、読み返さずに送る

避け方事実、日時、約束の中身を、記録と照らしてから送る

失敗例費用の負担や補償を、AIの文面で決めてしまう

避け方契約書や規約をもとに人が判断し、その結論だけを下書きに入れる

失敗例感情的な問い合わせに、AIの文面で言い返す

避け方相手の気持ちを受け止める一文を入れ、事実と対応を落ち着いて伝える

この記事は、問い合わせや苦情への返信にAIを使うための一般的な考え方をまとめたものです。責任や費用の負担に関わる判断は、契約や規約に基づき、各社の責任で行ってください。

よくある質問

クレームへの返信を、AIに全部任せてもよいですか?

任せきりはおすすめしません。事実の確認、対応の方針、何について謝るか、費用の負担などは人が決め、文章に整えるところをAIに任せるのが安全です。

入居者の個人情報は、どう扱えばよいですか?

名前、部屋番号、電話番号などは伏せてAIに渡し、下書きができてから人が入れてください。会社で使うなら、入力が学習に使われない法人向けプランを選びましょう。

AIの文面が、謝りすぎ・事務的すぎになります。

何について謝るのか(不安な思いをさせたこと、当社の不手際など)を具体的に指示してください。よく使う返信の型と、会社の言葉づかいをまとめた前提メモを添えると、文面がそろいます。

電話の問い合わせにも使えますか?

電話の内容を担当者が短く要約してAIに渡せば、折り返しのメールや記録の下書きに使えます。会話の録音を使う場合は、相手への説明や社内のルールを確かめてください。

※本記事の会社名・数値は、導入の流れを説明するためのモデルケースです。

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