モデルケース2026年10月28日

総合評価方式の提案書を、AIで下書きする。評価の基準を設問に分け、自社の記録で答える

評価基準の資料と自社の記録をAIが整理し、提案書の下書きができあがっていく様子のイラスト

価格だけで決まる入札とちがい、総合評価方式の入札では、価格に加えて「どんな体制で、どう業務を進めるか」を書いた提案書が点数で評価されます。清掃や設備管理の業務委託でも、この方式の案件が少しずつ増えています。ところが、提案書づくりは入札の作業の中でもいちばん時間がかかり、担当者の文章力に左右されがちです。この記事では、評価の基準を設問に分け、自社の記録から材料を集め、AIで下書きを作る方法を、ビルメンテナンス会社のモデルケースで紹介します。AIに「勝てる提案書」を書かせるのではなく、評価する人が読みやすい形に、自社の事実を並べる使い方です。

会社
B総合管理/地方都市のビルメンテナンス会社(清掃・設備管理・警備)
規模
従業員120名、入札担当3名
困りごと
総合評価方式の案件は1件の提案書に2〜3週間かかり、年に数件しか出せない。書ける人が1人に限られ、評価の基準に答えきれていない所で点を落としていた
対象の業務
評価基準の読み込み、提案書の構成づくりと下書き、提出前の確認

困っていたこと

  • 提案書1件に2〜3週間
  • 書ける人が1人だけ
  • 基準に答えきれず減点

やったこと

  • 評価基準を設問に分けた
  • 自社の記録から材料を集めた
  • AIで構成と下書きを作った

変わったこと

  • 下書きまでが数日に
  • 複数の担当で分担できた
  • 基準への答え漏れが減った

総合評価方式の提案書で、時間がかかるところ

総合評価方式では、価格の点数と、価格以外の点数(技術提案、業務の実績、配置する人の資格や経験、地域への貢献など)を合わせて落札者が決まります。どの項目に何点を配るか、点数をどう計算するか(価格以外の点数を足す方式や、価格で割る方式など)は、発注機関ごとに入札説明書や評価基準で示されます。

B総合管理では、この方式の案件が出るたびに、ベテランの入札担当者が1人で提案書を書いていました。時間がかかっていたのは、文章を書くことそのものより、その前後の作業です。

基準を読み解くのに時間がかかる評価基準・仕様書・様式の注意書きが別々の資料にあり、何を書けば点になるのかを整理するだけで数日かかる
材料が社内に散らばっている過去の業務実績、資格者の名簿、研修や事故防止の記録が、部署ごとの資料やベテランの記憶に分かれている
書ける人が限られる提案書を書いた経験のある人が1人だけで、ほかの担当者は手伝い方が分からない

提案書の点数を上げるいちばんの近道は、名文を書くことではありません。評価の基準が求めていることに、もれなく、具体的に答えることです。その下準備こそ、AIが得意な作業です。

評価の基準を「設問」に分けて読む

提案書は、試験の答案に似ています。評価基準は「設問」で、配点は「設問ごとの点数」です。まずはAIに評価基準と仕様書を読ませ、設問の一覧表を作ってもらいます。

評価の項目(例)配点(例)評価の視点(例)書くべきこと
業務の実施方針10点仕様書の内容を理解し、施設の特徴に合った方針か施設の使われ方と、清掃・点検の重点
実施体制10点責任者と連絡体制が明確か、欠員時の対応があるか責任者・現場の人数、代わりの人の手配
品質の確保15点品質を確かめる仕組みがあるか巡回の頻度、点検表、お客様の声の受け方
安全と緊急時の対応10点事故防止と緊急時の連絡が具体的か安全教育、緊急時の連絡の流れ、到着時間
配置予定者の資格・経験5点必要な資格と、同種の業務の経験があるか資格証と、同じような施設での経験年数
※配点や項目は架空の例です。実際は各発注機関の評価基準に従ってください。

一覧にしてみると、「品質の確保」の配点が大きいのに、これまでの提案書では半ページしか書いていなかった、といった偏りが見えてきます。配点の大きい設問から、書く量と材料を厚くする。これだけでも提案書の質は変わります。

評価基準の設問と、自社の実績・資格者名簿・点検記録などの材料を線で結んで対応表を作っている図解
評価基準の設問ごとに、自社のどの記録を材料にするかを対応させる
ここがポイント

評価基準に「評価の視点」や「加点の条件」が書かれているときは、その言葉をそのまま見出しや小見出しに使うと、評価する人が採点しやすくなります。読み手は限られた時間で何社もの提案書を見比べている、と考えて構成を決めましょう。

AIを使った下書きの流れ(5ステップ)

  1. 基準を読む設問の一覧にする
  2. 材料を集める実績・資格・記録
  3. 構成を作る配点に合わせて
  4. 下書きする設問ごとにAIで
  5. 人が仕上げる事実と様式を確認
評価基準と仕様書の束を前に、何から書けばよいか分からず頭を抱えている入札担当者のイラスト
これまで提案書は1人のベテランが2〜3週間かけて書いていた。
設問の一覧と材料のファイルを見ながら、チームで提案書の下書きを分担して進めている入札担当者たちのイラスト
AI導入後設問と材料を先にそろえ、下書きはAIで。分担して数日で形に。

1. 基準を読む:入札説明書、評価基準、仕様書、提案書の様式をAIに渡し、設問の一覧表(項目・配点・評価の視点・様式の指定)を作らせます。枚数や文字の大きさの指定、書いてはいけないこと(社名を書かない指定など)も、この段階で一覧に入れておきます。

2. 材料を集める:設問ごとに、使える自社の記録を集めます。同じような施設での業務実績、資格者の名簿、研修の記録、ヒヤリハットの集計、お客様アンケートの結果などです。集めるのは事実と数字で、文章はまだ書きません。

3. 構成を作る:設問の一覧と配点をもとに、AIに見出しと、各見出しに使える分量の目安を出させます。様式の枚数制限から逆算して、配点の大きい設問に多くの紙面を割きます。

4. 下書きする:設問ごとに、評価の視点と材料を渡して、AIに下書きを書かせます。一度に全部を書かせず、設問1つずつ進めるのがコツです。

5. 人が仕上げる:担当者が事実と数字を元の記録で確かめ、施設の現地で見たことを書き足し、様式に流し込みます。最後に、設問の一覧と照らして答え漏れがないかを確かめます。

分担できるようになったことが、いちばんの変化

設問の一覧と材料のファイルがそろうと、提案書づくりを分けて進められるようになりました。B総合管理では、ベテランは配点の大きい「実施方針」と「品質の確保」を担当し、若手の担当者は「実施体制」と「配置予定者」の下書きと材料集めを担当しています。若手にとっては、ベテランの書いた部分と見比べることが、提案書の書き方を覚えるいちばんの勉強にもなっています。

AIへの頼み方の例

AIへの頼み方(評価基準を設問の一覧にする) 添付したのは、〇〇市の庁舎設備管理業務委託の入札説明書、評価基準、仕様書、提案書の様式です。 次の列の表に、評価の項目を1行ずつ整理してください。 項目/配点/評価の視点・加点の条件(資料の言葉のまま)/様式の指定(枚数・文字の大きさなど)/根拠の資料とページ ・資料に書いていないことは推測せず、「記載なし」と書いてください ・最後に、提案書に書いてはいけないことや、失格になる条件が書かれていれば、別に一覧にしてください

設問の一覧ができたら、設問ごとに下書きを頼みます。材料は、箇条書きのメモのままで構いません。

AIへの頼み方(設問ごとの下書き) 次の設問について、提案書の下書きを書いてください。 設問:品質の確保(15点) 評価の視点:品質を確かめる仕組みがあるか。改善の取り組みが具体的か。 使える材料(当社の事実): ・責任者が月2回、全フロアを巡回し、点検表で確認している ・清掃の品質は、利用者アンケートを年2回取り、結果を発注者に報告している(直近の満足度は〇%) ・指摘を受けた所は、翌日までに是正し、写真付きで報告している 条件: ・A4で1ページ以内、です・ます調 ・評価の視点の言葉を小見出しに使う ・材料にないことは書かず、足りない所は【要確認:〇〇の材料】と書く ・「最高の品質」などの根拠のない言い回しは使わない
AIの出力(例・一部) 1. 品質を確かめる仕組み 責任者が月2回、全フロアを巡回し、点検表に沿って清掃・設備の状態を確認します。確認した結果は点検表に記録し、毎月の業務報告で貴市にご報告します。 2. 利用者の声を生かした改善 年2回、庁舎の利用者を対象にアンケートを行い、結果と改善の内容をご報告します。【要確認:直近の満足度の数値と、改善した具体的な例】 3. 指摘への対応 ご指摘をいただいた箇所は、翌日までに是正し、是正前後の写真を添えてご報告します。

【要確認】の印が付いた所は、担当者が材料を探して書き足すか、書けない場合は削ります。材料のない約束を、AIの文章で書き足さないことが大切です。

説得力は「自社の記録」から生まれる

提案書を読む人は、同じような言葉が並んだ提案書を何社分も読んでいます。点数が分かれるのは、具体的な数字と、その会社にしか書けない事実があるかどうかです。AIは文章を整えるのは得意ですが、自社の事実を知っているわけではありません。材料を集める段階に、いちばん力をかけましょう。

書きがちな文章記録をもとにした文章
定期的に巡回し、品質の維持に努めます責任者が月2回、全フロアを巡回し、点検表(○項目)で確認します
緊急時には迅速に対応します夜間・休日も連絡を受け付け、30分以内に現場の担当者へ連絡がつく体制です(過去1年の平均到着時間は〇分)
従業員の教育を徹底しています新人は配属前に〇時間の研修を受け、年1回、全員で事故の事例を学ぶ勉強会を開いています

材料を、提案書のたびに集め直さない

B総合管理では、提案書で使った材料を「提案書の材料集」というフォルダにまとめ、設問の種類ごとに整理しています。業務の実績、資格者の名簿、研修の記録、アンケートの結果を、年に1回、入札期の前に更新するだけです。次の提案書では、AIに材料集から使えるものを探させるところから始められます。

開札後に評価の点数が公表される発注機関もあります。点数が分かったときは、設問ごとに「何点だったか」を材料集に書き残しておくと、翌年どの設問を厚くするべきかが分かります。入札結果の整理と組み合わせる方法は、入札結果をAIで読んで、取りに行く案件を選ぶで紹介しています。

注意点と、やってはいけないこと

失敗例AIが書いた実績や数字を、確かめずにそのまま出す

避け方実績・資格・数字は、すべて元の記録で照合する。提案書の虚偽の記載は、失格や指名停止などの措置の対象になるおそれがある

失敗例ほかの会社の提案書や、ネット上の文章をAIに渡して似せて書かせる

避け方書くのは自社の事実だけ。公表されている他社の提案書の文章を写すのは避ける

失敗例公開されていない資料を、設定を確かめずにAIに入れる

避け方参加者だけに配られた資料や、自社の原価・人員の情報は、入力が学習に使われない法人向けプランで扱う

失敗例様式の指定を確かめずに、AIの下書きをそのまま流し込む

避け方枚数・文字の大きさ・社名を書かない指定などを、提出前に設問の一覧と照らして確認する

提案書は、受注したあとに守る約束でもあります。AIの文章がもっともらしくても、自社で実行できない内容は書かないこと。業務が始まったあと、発注者は提案書のとおりに業務が行われているかを見ています。

提出前の確認は、2人で

下書きを作った担当者とは別の人が、設問の一覧を手元に置いて、提案書を読み直します。「この設問の答えは、どこに書いてあるか」を1つずつ指さしで確かめるだけで、答え漏れはほとんど防げます。AIに「設問の一覧と提案書を照らして、答えていない設問を挙げて」と頼むのも、確認の助けになります。

この記事は、総合評価方式の提案書づくりにAIを使うための一般的な考え方をまとめたものです。評価の方法や提案書の様式は発注機関ごとに異なります。必ず各案件の入札説明書と評価基準に従い、不明な点は発注機関に確認してください。

よくある質問

総合評価方式とは、どんな入札ですか?

価格だけでなく、技術提案や実績、配置する人の資格など価格以外の要素も点数にし、価格と合わせて落札者を決める方式です。項目や配点、計算のしかたは発注機関ごとに入札説明書や評価基準で示されます。

AIに提案書を丸ごと書かせてもよいですか?

おすすめしません。AIは自社の事実を知らないため、もっともらしい一般論や、根拠のない約束を書いてしまうことがあります。設問ごとに自社の材料を渡して下書きを作り、事実の確認と仕上げは人が行いましょう。

入札説明書や仕様書をAIに入れても大丈夫ですか?

公開されている資料であれば、通常は問題になりにくいですが、参加者だけに配られた資料や、自社の原価・人員の情報は、入力が学習に使われない法人向けプランで扱い、社内のルールで入力してよい範囲を決めておきましょう。

提案書を書いた経験がなくても使えますか?

使えます。むしろ、評価基準を設問の一覧にする作業は、経験の少ない担当者ほど助けになります。最初はベテランが書いた過去の提案書と設問の一覧を見比べながら、1つの設問から担当してみるのがおすすめです。

毎回、一から材料を集める必要がありますか?

実績、資格者の名簿、研修の記録、アンケートの結果などを「提案書の材料集」として1つのフォルダにまとめ、年に1回更新しておくと、次の提案書では材料を探す時間が大きく減ります。

※本記事の会社名・数値は、導入の流れを説明するためのモデルケースです。

提案書づくりを、チームで回せる形に

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