モデルケース2026年10月30日

自社の手順を、Claudeの「スキル」にする。会話だけで作れる、点検報告書のスキルの作り方と育て方

社員がClaudeと会話しながら、会社の報告書の手順とひな形を1つのスキルにまとめている様子のイラスト

基本編では、Claudeに標準で入っているExcel・Word・PowerPointのスキルを紹介しました。実用編では一歩進んで、自社の仕事の手順を、Claudeの「スキル」にする方法を紹介します。専門的な知識がなくても大丈夫です。Claudeと会話しながら、手順とひな形を伝えるだけで、スキルのファイルを作ってもらえます。ビルメンテナンス会社が、点検報告書の書き方をスキルにしたモデルケースで見ていきます。

会社
B総合管理/地方都市のビルメンテナンス会社(清掃・設備管理・警備)
規模
従業員120名、設備管理の担当者15名
困りごと
点検報告書をAIで下書きしているが、人によって頼み方が違い、書式や言い回しがばらばら。毎回「この形で」と長い説明を貼り付けていた
対象の業務
設備点検の報告書づくり(管理会社・オーナー向け)

困っていたこと

  • 頼み方が人によってばらばら
  • 毎回長い説明を貼り付け
  • 書式の直しに時間がかかる

やったこと

  • 報告書の手順をスキルにした
  • ひな形と言い回しの決まりを入れた
  • 全員が同じスキルを使う

変わったこと

  • ひと言で同じ形の報告書に
  • 書式の直しがほぼなくなった
  • 新人でも同じ品質に

スキルにすると、何が変わるのか

B総合管理では、点検報告書の下書きにAIを使い始めていました。ところが、担当者ごとに頼み方が違うため、見出しの順番、「異常なし」の書き方、写真の説明の入れ方がばらばらでした。上司は内容の確認より先に、書式の直しに時間を取られていました。

人によって仕上がりが違う同じ点検でも、担当者によって見出しや言い回しがそろわない
毎回同じ説明を貼る「この形で」「この言い回しで」という長い説明を、毎回チャットに貼り付けていた
書式の直しに追われる上司が中身の確認より先に、体裁の修正に時間を使っていた

報告書の手順をスキルにしてからは、担当者は「この点検メモを報告書にして」と頼むだけになりました。Claudeがスキルの手順書を読み込み、会社の決まった形・決まった言い回しで下書きを作ります。

スキルにしやすい仕事、しにくい仕事

どんな仕事でもスキルにすればよい、というわけではありません。向いているのは、くり返し発生し、形や決まりがはっきりしている仕事です。

スキルにしやすい仕事(例)理由
点検報告書・作業報告書見出しの順番や言い回しの決まりがある
見積書に添える説明文毎回同じ構成で、注意書きの文言も決まっている
議事録のまとめ決定事項・宿題・期限を、同じ形で残したい
お客様へのお知らせ文(工事・停電の案内など)入れるべき項目と、ていねいな言い回しが決まっている
入札公告の読み取り毎回同じ項目(資格・期日・提出書類)を抜き出す

反対に、毎回やり方が違う仕事や、判断の大部分を経験に頼っている仕事は、まだスキルに向きません。まずは「毎週のように同じ説明をAIにしている仕事」を1つ選ぶのがおすすめです。

ここがポイント

スキルにする前に、その仕事の手順を紙1枚に書き出してみましょう。書き出せない仕事は、AIに渡しても同じ仕上がりにはなりません。前提メモを作ってある会社なら、それが材料の一部になります。

会話でスキルを作る流れ(4ステップ)

  1. 材料をそろえるひな形と良い見本
  2. 会話で伝える手順と決まりごと
  3. 作ってもらうスキルのファイル
  4. オンにして試す実際の仕事で確認
点検報告書の書式がばらばらで、上司が赤ペンで体裁を直している様子のイラスト
これまで担当者ごとに書式がばらばら。上司は体裁の直しに追われていた。
同じ形にそろった報告書を、上司が中身だけ確認している様子のイラスト
AI導入後スキルで書式がそろい、上司は中身の確認だけに。

1. 材料をそろえる:報告書のひな形(Wordなど)、上司が「これは良い」と認めた報告書の見本を2〜3件、言い回しの決まり(「異常なし」ではなく「異常は認められませんでした」と書く、など)を用意します。見本は、お客様名や物件名を伏せたものにします。

2. 会話で伝える:Claudeに「点検報告書を作るスキルを作りたい」と伝え、材料を添付します。Claudeから、いつ使うのか、どんな仕上がりが良いのか、といった質問が返ってくるので答えていきます。入社したばかりの人に教えるつもりで、具体的に答えるのがコツです。

3. 作ってもらう:Claudeが、手順書(SKILL.md)を書き、ひな形などの材料を整理して、スキルのファイルにまとめてくれます。

4. オンにして試す:できたスキルを保存し、設定の「機能」の画面の「スキル」の欄でオンにします。実際の点検メモで報告書を頼んでみて、手順どおりに作られるかを確かめます。

頼み方の例(スキルを作る) 点検報告書を作るためのスキルを作りたいです。 ・使う場面:設備点検のあと、担当者のメモから管理会社・オーナー向けの報告書を作るとき ・添付:報告書のひな形(Word)、上司が良いと認めた見本3件(お客様名は伏せてあります)、言い回しの決まり ・大事なこと:メモにないことは書かない。分からない所は【要確認】と書く。数値は単位まで書く スキルを作るのに足りない情報があれば、先に質問してください。

スキルの中身を見てみる

できあがったスキルは、フォルダの中に手順書(SKILL.md)とひな形などが入った形になっています。手順書の先頭には、スキルの名前と「いつ使うか」の説明が書かれています。Claudeはこの説明を見て、スキルを使うかどうかを判断します。

手順書(SKILL.md)の例・一部 --- name: tenken-houkoku description: 設備点検のメモから、管理会社・オーナー向けの点検報告書をWordで作る。点検報告書、作業報告書、点検結果のまとめを頼まれたときに使う。 --- # 点検報告書の作り方 1. メモから、物件・点検日・点検項目・結果・所見を読み取る 2. 添付のひな形の見出しの順番で書く(概要→点検結果の表→所見→次回の予定) 3. 異常がない項目は「異常は認められませんでした」と書く 4. メモにないことは書かず、【要確認】と書く 5. 最後に、確認が必要な所の一覧を付ける

いちばん大事なのは、説明(description)の書き方です。「このスキルは何をするのか」と「どんな依頼のときに使うのか」をセットで書いておくと、「この点検メモを報告書にして」と頼むだけで、自動でスキルが使われるようになります。スキルの名前は、半角の英小文字・数字・ハイフンで付ける決まりがあります。

使いながら育てる

スキルは、一度作って終わりではありません。使ってみて「ここが違う」と思った所は、Claudeに「このスキルの手順に、〇〇を加えて」と頼んで直してもらいます。B総合管理では、最初の1か月で次のような手直しを重ねました。

気づいたことスキルに加えたこと
写真の説明が長すぎる写真の説明は1枚につき1行、場所と状態だけを書く
消防設備の点検だけ、書く項目が違う消防設備の点検は、別の見出しの順番を使う
管理会社によって呼び方が違うお客様ごとの呼び方の一覧を、参考資料として加える

手直しの依頼は、現場の担当者から集めるのがおすすめです。「スキルで作った報告書の、直したくなった所」を月に一度集めるだけで、スキルはどんどん会社に合っていきます。

社内で同じスキルを使うには

自分で作ったスキルは、基本的にはそのアカウントの中で使うものです。Team・Enterpriseなどの法人向けプランでは、組織の中でスキルを共有する仕組みも用意されています。全員が同じスキルを使えば、誰が頼んでも同じ形の報告書になります。共有のしかたは変わることがあるので、提供元の公式ヘルプで最新の方法を確認してください。

GPTsやGemを使っている会社は

ChatGPTのGPTsは12月に終了し、スキルなどを含む「プラグイン」へ移る予定です。GeminiのGemも、11月から「スキル」に切り替わります(2026年10月時点の発表・報道)。これまで「専用のAI」を作って社内で使ってきた会社は、移行の準備が必要です。

どのAIに移るにしても、やることは共通しています。移行は、自社の仕事の手順を見直すよい機会でもあります。

確かめること理由
どの専用AIを、誰が、何の仕事に使っているか使われていないものまで移す必要はない。まず棚卸しをする
指示文(説明)と、添付している資料スキルの手順書と参考資料の材料になる。古い情報は直してから移す
外部のサービスとの連携や、共有の設定報道では、ChatGPTの移行では外部連携の一部や共有の設定は自動で引き継がれないとされている。移したあとに設定し直す
移したあとの仕上がり同じ指示でも、仕組みが変わると仕上がりが変わることがある。実際の仕事で試してから社内に広げる
※移行の方法や引き継がれる範囲は、各社の公式の案内で必ず確認してください。

移行先をClaudeにする場合も、この記事で紹介した流れがそのまま使えます。GPTsやGemの指示文と資料を材料としてClaudeに渡し、「この内容をスキルにしたい」と頼めば、手順書の形に整えてもらえます。

注意点と、やってはいけないこと

失敗例お客様名や個人情報が入ったままの見本を、スキルの材料にする

避け方見本は名前や物件名を伏せてから渡す。スキルの中に個人情報を残さない

失敗例作ったスキルを試さずに、全員に使わせる

避け方まず自分と1〜2人で、実際の仕事で試してから広げる

失敗例スキルが作った報告書を、確認せずにお客様に出す

避け方スキルは書式をそろえるもの。中身の確認は、これまでどおり人が行う

失敗例ネットで見つけたスキルを、中身を見ずに入れる

避け方スキルは作業の指示でもある。自社で作ったものか、信頼できる配布元のものだけを使う

スキルは、会社の仕事のやり方そのものを書き残す道具です。だからこそ、パスワードや社外秘の数字など、書き残してはいけない情報を入れないことが大切です。

この記事は2026年10月時点の公開情報をもとに、Claudeで自社のスキルを作るための一般的な考え方をまとめたものです。機能の内容や画面、共有の方法は変わることがあります。最新の情報は提供元の公式ヘルプでご確認ください。

よくある質問

スキルを作るのに、プログラミングの知識は必要ですか?

必要ありません。Claudeとの会話で、手順やひな形、良い見本を伝えると、Claudeが手順書(SKILL.md)を書いてスキルのファイルにまとめてくれます。

どんな仕事をスキルにすればよいですか?

くり返し発生し、形や決まりがはっきりしている仕事が向いています。点検報告書、見積の説明文、議事録、お知らせ文など、毎週のように同じ説明をAIにしている仕事から始めるのがおすすめです。

作ったスキルが使われないときは?

スキルの説明(description)に、スキルの役割と使う場面が具体的に書かれているか確かめてください。設定でスキルがオンになっているかも確認しましょう。

社員全員で同じスキルを使えますか?

自分で作ったスキルは基本的にそのアカウントで使うものですが、Team・Enterpriseなどの法人向けプランには、組織の中でスキルを共有する仕組みがあります。最新の方法は提供元の公式ヘルプで確認してください。

GPTsやGemで作った専用AIは、Claudeのスキルにできますか?

GPTsやGemの指示文と資料を材料としてClaudeに渡し、スキルにしたいと伝えれば、手順書の形に整えてもらえます。ただし、外部サービスとの連携などはそのままでは移らないので、移したあとに実際の仕事で試して確かめてください。

スキルに入れてはいけない情報はありますか?

お客様の個人情報、パスワード、社外秘の数字などは入れないでください。見本の報告書は、名前や物件名を伏せてから材料にしましょう。

※本記事の会社名・数値は、導入の流れを説明するためのモデルケースです。

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