モデルケース2026年11月1日
DXFデータから、AIで数量を拾う。照明器具の台数と配管の長さを集計して、積算をスピードアップ
照明器具が何台、コンセントが何個、配管が何メートル。設備工事の積算は、図面から数量を「拾う」作業から始まります。色ペンで印を付けながら数え、スケールで長さを測る。慣れた人でも1物件で半日、大きな現場なら数日がかりです。この記事では、CADから書き出したDXFデータをAIに渡して、器具の数と配管の長さを集計させる方法を、電気工事会社のモデルケースで紹介します。専用の積算ソフトを新しく買わなくても、表計算やプログラムを動かせるAIがあれば始められる使い方です。
- 会社
- F電設/地方都市の電気工事会社(オフィス・店舗・学校の電気設備)
- 規模
- 従業員40名、積算担当2名
- 困りごと
- 見積依頼が重なると拾い出しが追いつかない。紙の図面に印を付けて数えるため、数え漏れや二重カウントの確認にも時間がかかる
- 対象の業務
- 照明器具・コンセントの台数、配管の長さの拾い出し
困っていたこと
- 拾い出しに1物件半日
- 数え漏れの確認に時間
- 担当者の負担が大きい
やったこと
- CADからDXFを書き出した
- AIで記号と長さを集計した
- 人が図面と照らして確認
変わったこと
- 台数の拾いが1時間ほどに
- 集計表が自動でそろう
- 確認に時間を回せる
なぜDXFなら、数量を拾えるのか
紙やPDFの図面は、人の目には記号や線に見えても、AIにとっては「絵」です。一方、CADのデータには、どの記号がどこに何個置かれているか、線がどの画層に何メートル引かれているかという情報がそのまま入っています。
DXFは、AutoCADをはじめ多くのCADが書き出せる、図面データの受け渡し用の形式です。中身は文字の情報なので、プログラムで読み取ることができます。AIの中には、自分でプログラムを書いて動かせるもの(Claudeの「コードの実行」機能やChatGPTのデータ分析機能など)があり、DXFを渡すと中身を読み取って集計できます。
図面のデータから、記号の数と線の長さを読み取って表にする
ここがポイント
ポイントは、図面が「記号はブロック、配管は決まった画層」で描かれていることです。社内のCADの描き方がそろっていれば、AIはかなり正確に数を拾えます。逆に、描き方がばらばらだと、AIも迷います。
AIで数量を拾う流れ(5ステップ)
DXFを書き出すCADから保存
AIに渡す中身を確かめさせる
集計させる記号と長さ
図面と照合人が確認
積算へ割増と単価
これまで色ペンで印を付けながら、1台ずつ数えていた。
AI導入後数えるのはAI。人は集計表と図面の照合に集中。
1. DXFを書き出す:CADで図面を開き、DXF形式で保存します。複数の図面がある場合は、フロアごと・設備ごとにファイルを分けておくと確認しやすくなります。
2. AIに渡して、中身を確かめさせる:いきなり集計させず、まず「どんな画層と記号(ブロック)が入っているか」を一覧にさせます。ここで、照明器具の記号がどの名前で描かれているかを確かめます。
3. 集計させる:記号ごとの個数と、配管の画層ごとの線の長さを表にさせます。表計算ソフトのファイルで出力させると、そのまま積算に使えます。
4. 図面と照合する:担当者が図面を見ながら、集計の数がおかしくないかを確かめます。部屋ごとに分けて集計させると、照合が楽になります。
5. 積算へつなぐ:拾った数量に、立ち上がり・立ち下がりの長さや割増を加え、単価を掛けて積算します。この判断は人が行います。
AIへの頼み方と、出力の例
頼み方の例(まず中身を確かめる)
添付したのは、事務所の照明・コンセント図のDXFファイルです(単位はmm)。
集計の前に、次の2つを一覧にしてください。
1. 図面に入っている画層の名前と、それぞれに含まれる図形の種類と数
2. 図面に入っているブロック(記号)の名前と、置かれている数
ブロックの名前から、何の記号かを推測できるものは推測を書き、分からないものは「不明」としてください。
中身が分かったら、集計を頼みます。下の出力は、ESACで用意した見本の図面(18m×12mの事務所と会議室)を、実際にこの手順で集計した結果です。
頼み方の例(集計する)
確認した内容をもとに、次の表をExcelのファイルで作ってください。
・シート1:記号の名前/器具の種類(さきほどの推測)/個数
・シート2:配管の画層ごとの線の長さ(m、小数1けた)
・シート3:文字だけで描かれていて、ブロックになっていない記号の一覧
集計に使った条件(どの画層・どのブロックを数えたか)も、最後のシートに書いてください。
AIの出力(見本の図面での実際の集計結果)
■ 記号の個数
LED-BASE(ベースライト)……25台
LED-DL(ダウンライト)……9台
EXIT-LED(誘導灯)……2台
CON-2P(2口コンセント)……20個
■ 線の長さ
E-配管……102.7 m
A-壁……72.0 m(集計の対象外)
■ ブロックになっていない記号
「DL」の文字が1か所(会議室の北側)。ダウンライトの記号を文字で描いた可能性があります。図面で確認してください。
出力の最後の項目に注目してください。記号が文字で描かれていると、ブロックの数には含まれません。「数えられなかったもの」もあわせて出させるのが、数え漏れを防ぐコツです。
うまく拾えない図面と、その対策
DXFならどんな図面でも正確に拾えるわけではありません。F電設でも、最初は次のような図面でつまずきました。
拾えた数を、必ず「どこか1か所」で確かめる
F電設では、集計のたびに1部屋だけは人が手で数え、AIの数と合うかを確かめるルールにしています。部屋ごとの集計が合えば、全体の数も信頼できます。合わなければ、図面の描き方に原因があることがほとんどです。
拾った数量を、積算につなげる
平面図から拾えるのは、あくまで図面に描かれている分の数量です。実際の積算では、次のような分を人が加えます。
- 天井から下がる配管や、壁の中を立ち上がる配管の長さ(平面図には描かれない)
- 施工のロスや継手の分の割増
- 図面に描かれていない付属品(ボックス、支持金物など)
- 複数の階で同じ図面を使う場合の階数分の掛け算
F電設では、AIに出させた集計表に「立ち上がりの本数」「割増率」の列を足し、担当者が値を入れて積算に回しています。数えるのはAI、判断するのは人という分担です。
台数の拾い出しにかかる時間は、1フロアあたり約4時間から約1時間ほどになりました。浮いた時間は、図面の確認や、現場の条件を見込んだ積算の調整に回しています。
注意点と、やってはいけないこと
AIの集計した数を、確かめずにそのまま見積に使う
少なくとも1部屋は人が手で数えて照合する。合わないときは図面の描き方を確かめる
お客様の図面を、ルールなしでAIに渡す
図面は預かった大切な情報。入力が学習に使われない法人向けプランを使い、お客様との約束(秘密保持)の範囲を確かめる
平面図の数量だけで積算を終える
立ち上がりや割増、付属品は人が加える。AIの集計は積算の「材料」と考える
AIに単価や見積金額を決めさせる
単価や金額は自社の基準と経験で決める。AIは数を数えるところまで
DXFは文字の情報なので、ファイルを開けば会社名や物件名、設計事務所の情報も入っています。図面の取り扱いのルールは、紙の図面と同じかそれ以上に厳しく考えましょう。
- CADからDXFを書き出した(外部参照は取り込み済み)
- 図面の単位(mm・m)をAIに伝えた
- まず画層とブロックの一覧を出させて、数える対象を決めた
- 記号の個数と配管の長さを、表計算のファイルで出させた
- ブロックになっていない記号(文字など)の一覧も出させた
- 1部屋は手で数えて、AIの数と照合した
- 立ち上がり・割増・付属品を人が加えた
- 図面を扱うAIのプランと社内ルールを確かめた
この記事は、DXFデータから数量を集計するための一般的な考え方をまとめたものです。集計の精度は図面の描き方によって大きく変わります。見積や積算は、各社の基準と責任で行ってください。記事中の集計結果は、ESACが用意した見本の図面によるものです。
よくある質問
専用の積算ソフトがなくても、本当に拾えますか?
DXFは図面の情報を文字で持っている形式なので、プログラムを動かせるAIなら、記号(ブロック)の数や画層ごとの線の長さを集計できます。ただし精度は図面の描き方しだいです。拾った数は必ず人が図面と照合してください。
PDFの図面ではだめですか?
スキャンしたPDFは画像なので、記号の数を正確に数えるのは難しくなります。CADから出したPDFでも、記号の意味までは分からないことが多いため、できるだけCADからDXFを書き出して使うのがおすすめです。
DWGのファイルしかありません。
AutoCADなどのCADでDWGを開き、「名前を付けて保存」でDXF形式を選べば書き出せます。外部参照を使っている図面は、取り込んでから書き出してください。
配管の長さは、そのまま積算に使えますか?
平面図から拾えるのは、図面に描かれている水平方向の長さです。立ち上がり・立ち下がりの長さや、施工のロスの割増、付属品は、担当者が加えてください。
お客様からもらった図面をAIに入れても大丈夫ですか?
図面はお客様から預かった大切な情報です。入力が学習に使われない法人向けプランを使い、お客様との秘密保持の約束や社内のルールの範囲で扱ってください。不安な場合は、お客様に確認してから使いましょう。
※本記事の会社名・数値は、導入の流れを説明するためのモデルケースです。
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