活用事例2026年10月15日

ベテランの引き継ぎ資料を、AIで60時間から15時間に。退職前の聞き取りから、若手が現場で使える「トラブル対応集」をつくる

ベテラン社員の話をAIが整理し、若手が現場で使えるトラブル対応集にするイラスト

「あの人が辞めたら、この建物のことは誰も分からない」。設備管理や工事の会社では、ベテラン社員の頭の中にしかない知恵が、たくさんあります。引き継ぎ資料を作ろうとしても、本人は忙しく、書くのも得意ではない。この記事では、ベテランへの聞き取りをAIで整理し、若手が現場で使える「トラブル対応集」をつくる方法を、モデルケースで紹介します。

会社
Gビル設備/地方都市の設備管理会社
規模
従業員35名、管理物件 約40棟
困りごと
勤続35年のベテラン設備員Hさんが来年退職。担当物件の注意点やトラブル対応が、Hさんの頭の中にしかなかった
対象の業務
引き継ぎ資料トラブル対応集若手の教育
使ったもの
スマホの録音、AI「Claude(クロード)」、社内の共有フォルダ

困っていたこと

  • ノウハウが頭の中にしかない
  • 書く時間がとれない
  • 若手からの電話が多い

やったこと

  • ベテランに話してもらう
  • AIが文字起こしして整理
  • Q&A形式の対応集にする

変わったこと

  • 資料づくりが約60時間から15時間に
  • 若手が現場で調べられる
  • ベテランへの電話が減った

ベテランの知恵が引き継がれない理由

Hさんは「この建物のポンプは冬に調子を崩しやすい」「このお客様は朝の作業を嫌がる」といった、マニュアルにはない知恵をたくさん持っていました。会社としても引き継ぎ資料を作ってほしいと考えていましたが、なかなか進みませんでした。

頭の中にしかない経験から身についた勘どころは、本人も言葉にしにくい
書く時間がない現場の仕事を抱えながら、何十ページもの資料は書けない
読まれない分厚い資料を作っても、現場で必要なときに探せない

AIを使った引き継ぎの流れ(5ステップ)

ポイントは、ベテランには「書いてもらう」のではなく「話してもらう」こと。整理と清書はAIが行い、ベテランは内容が正しいかを確認するだけです。

  1. 聞き取り1回30分を録音
  2. AIが整理文字起こしと要約
  3. 本人が確認間違いを直す
  4. 対応集にまとめるQ&A形式で
  5. 現場で調べるスマホから質問
設備の異常に困り、ベテランに電話で聞くしかない若手社員のイラスト
これまで現場で困ったら、ベテランに電話するしかない。つながらないと作業が止まる。
スマホでトラブル対応集を調べて、落ち着いて対応する若手社員のイラスト
AI導入後まずスマホで対応集を調べる。分からないときだけベテランに聞く。

聞き取りは「3つの切り口」で

「何でも話してください」では、話がまとまりません。聞き取りは、次の3つの切り口で質問を決めておくと、短い時間で役に立つ話が集まります。

ベテランへの聞き取りを、異常のとき・季節ごと・建物ごとの3つの切り口で行うイラスト
異常のとき・季節ごと・建物ごとに聞く
ここがポイント

聞き手は、若手が務めるのがおすすめです。若手が「本当に知りたいこと」を質問できるうえ、聞き取りそのものが、ベテランから若手への教育の時間になります。

AIへの頼み方の例

AIへの頼み方(例) 添付は、設備員Hさんへの聞き取りの文字起こしです。若手の設備員が現場で使う「トラブル対応集」を作ってください。 形式 ・「症状(こんなときは)」「まず確認すること」「対処の手順」「注意点」「関係する建物」の項目で、1件ずつQ&A形式にしてください ・話の中に出てきた建物ごとの注意点は、別に「建物別メモ」としてまとめてください ・話の内容があいまいな箇所は【要確認】と書き、Hさんに確認する質問を一覧にしてください ・話していない手順や数値は付け加えないでください

AIが作った【要確認】の一覧をもとに、次回の聞き取りでHさんに確認します。これをくり返すことで、対応集の中身がどんどん確かなものになっていきます。

どれくらい時間が減ったか

ベテランが一から引き継ぎ資料を書く場合と比べて、次のように変わります。

作業これまで(想定・時間)AI活用(時間)
ベテランが書く/話す408
まとめ・清書153
確認・手直し54
合計6015

時間は当社の試算で、聞き取りの回数や物件の数によって変わります。「これまで」は、ベテランが自分で資料を書いた場合の想定です。

対応集ができてから、若手からHさんへの電話は月に約30回から約8回に減りました。Hさんが退職したあとも、対応集は若手が使いながら少しずつ書き足していく「会社の財産」になっています。

注意点と、うまく進めるコツ

失敗例退職の直前になってから、あわてて聞き取りを始める

避け方退職の半年〜1年前から、月に2〜3回、30分ずつ聞き取る

失敗例AIがまとめた内容を、本人の確認なしで使う

避け方必ずベテラン本人が読み、間違いや足りない点を直してから使う

失敗例対応集を作って終わりにする

避け方現場で使って分かったことを、若手が書き足していく仕組みにする

よくある質問

ベテランが話すのを嫌がりませんか?

「書いてください」と頼むより、「話を聞かせてください」とお願いするほうが、引き受けてもらいやすいものです。若手が聞き手になると、教える場として前向きに取り組んでくださる方が多くいます。

録音した音声はどうやって文字にしますか?

スマホの録音アプリや、AIの文字起こし機能を使います。多少の聞き間違いがあっても、AIが前後の文脈から整理し、分からない箇所は【要確認】として残します。

退職まで時間がない場合はどうすればよいですか?

まずは「異常のとき」の切り口だけに絞り、事故やお客様への影響が大きいトラブルから優先して聞き取ることをおすすめします。

※本記事の会社名・数値は、導入の流れを説明するためのモデルケースです。

御社のベテランの知恵も、残しませんか

無料診断では、聞き取りの進め方と、AIで対応集にまとめる流れを、御社の業務に合わせてご説明します。全国対応、対面でもオンラインでも。

3分で削減時間を試算する(無料)

あわせて読みたい